アルデラ神軍の将、アクガルパ。教皇イェナーシィの信頼も厚い、名将だ。
カトヴァーナ帝国、キオカ共和国の両国に対しては歴史的に中立の立場を貫いており、どちらか一方に与することは、これまでほとんどなかった。大アラファトラ山脈が決して外敵を通さない『神の階』として機能したのも、この国が大アラファトラの北側にあったことが大きい。
アルデラ教の紋章は濃紺の布地に真っ白な一つ星。これを正位置に掲げて軍を出すのは聖務遂行の時であり、それを見たイクタはひとつの結論に思い至った。
それはキオカ共和国がアルデラ教の神官と結託し、サフィーダ中将の悪行を呼び水に、ラ・サイア・アルデラミンの聖務遂行による帝国侵攻を促していたこと。さらには、それをシナーク族による内乱誘発と並行して企てていたことを……。
一万以上を出兵したアルデラ神軍の目的は、宗教的戒律を犯した北域鎮台の破壊と、その後の北域一体の制圧にあるとみるのが妥当だった。シナークとの戦いで疲弊しきった北域鎮台が、いまだかつて予想していなかった北からの進行を受けることになる。果たして、まともに抵抗できるのか……。