ここではその6話でイクタがシャミーユに対して語った「二刀は皇帝によって望まれ、許されたイグセムの特権」である歴史的な経緯を解説する。
軍閥時代の終わり、国内統一を果たした当時のイグセムは、皇帝に自分の魂ともいえる二刀を差し出した。自分の個性を奪うことで、全体の秩序を至上とした新たな国軍を作ろうとしたためだった。
だが、裏腹に皇帝は戸惑う。イグセムに絶大な信頼を寄せていた当時の皇帝にとって、その象徴ともいえる二刀が失われることは由々しき事態。そこで皇帝は言う。「二刀は帝国の誉れそのもの。兵はそれに憧れて戦場に立ち、民はそれを護国の頼みとして日々忠勤に励んでいる。だというのに、それを捨てることが秩序を壊すことでなくてなんであろうか」と。
この言葉に心を動かされたイグセムは「では、この二刀が一敗地に塗れて、ついには不敗の加護を失うその時までは」と返した。つまり、剣の上で負けない限りは二刀を握り続けると誓ったのだ。それは同時に秩序からの逸脱を、決して単なる立場ゆえの特権としないという決意の表れでもあった。
これが、世に言う「不敗の誓い」の逸話である。
シャミーユに対して、静かに諭すイクタ。彼女もまた皇族であるがゆえに、ヤトリに護られる立場の人間なのだ。